2チーム目の紹介は、アメリカン・リーグ東地区に所属するニューヨーク・ヤンキースです。
(*この記事に出てくる日本円は全て、1ドル=120円で計算しています。時期によって為替が違うのですが、わかりやすくするために統一してありますのでご了承ください。)
【チームロゴ】
非常にわかりやすいチームロゴです。『N』 と 『Y』 で、本拠地の 『New York』 を示しています。
【チームユニフォーム】
ちなみにヤンキースは、スポーツチームとして初めてユニフォームに選手を示す背番号を入れたチームといわれています。(1929年)
1960年代ごろからは多くのチームが背番号の上に選手の名前を入れ始めます。ですがヤンキースのユニフォームに選手の個人名は刻まれていません。これは 『選手個人がヤンキースというチームの存在や概念を超えることはない。選手はヤンキースの一部だ。』 という美学が込められているそうです。
このように選手のユニフォームには背番号のみ刻まれています。
現在ヤンキースの一員である田中選手のユニフォームにも名前は入っていません。
【伝統のある球団&スタインブレナー家】
ヤンキースはワールドシリーズ出場40回、制覇27回を誇る超名門球団です。ワールドシリーズの出場回数、優勝回数に関して、どちらも2位の球団を大きく離してトップです。
造船業で莫大な富を得たスタインブレナー家のジョージ・スタインブレナーが1973年からオーナーとなり、今現在は息子のハル・スタインブレナーとハンク・スタインブレナーが共同経営者となっています。(二人が共同経営するYankee Global Enterprisesがオーナーということになっています。)父のジョージは2010年に亡くなっていますが、その球団経営の際に見せた剛腕ぶりから 『ビッグ・ボス』 や 『ザ・ボス』 という別名で呼ばれており、今でも彼の存在は語りづがれています。
こちら、ビッグ・ボスことジョージ・スタインブレナー。
こちらが現オーナーのハルとハンクです。
そして、ヤンキースは厳しい規律をチーム関係者全員に課していることでも有名です。無精ひげや長髪は禁止されています。このようなチームの規律や伝統もジョージ・スタインブレナーの意向によって確立されました。
ジョージ・スタインブレナーは、彼の意に沿わなかったり、結果の出せない監督やGMはすぐにクビにするというスタイルの持ち主でした。1973年から1996年までの23年間で20回の監督交代、30年間で11人のGMを迎える、という強硬的なスタイルは彼の代名詞でもあります。
そして、ヤンキースといえばお金持ち球団として知られています。選手獲得や選手保留のための出費を惜しみません。選手のために資金を出せるということは、 『その資金がある』 ということなのですが、MLB球団の収入資源やビジネスモデル、MLB自体の経営等についても今度詳しく書きたいと思います。
しかし、2014年の選手の年棒総額をチーム別にみるとヤンキースは2位になっています。1位はLAドジャーズです。ドジャーズが約280億円。ヤンキースが240億円となっています。選手一人あたりの平均年棒を見るとヤンキースが1位で約9億6千万円。2位のドジャーズが9億3千万円となっています。
【チーム本拠地】
1923年から使用されていたヤンキースタジアムの老朽化が進み、2006年から新しいヤンキースタジアムの建設が始まります。そして、2009年に新・ヤンキースタジアムが完成します。この新スタジアム建設&工事にかかった費用は総額で約2,700億円、そのうちの約1,400億円はニューヨーク市が負担、すなわちニューヨーク市民が負担しています。
こちら旧スタジアムの最終形態です。1923年から何度かリフォームが行われ、最終的にはこのような球場の形でした。
こちら新スタジアムの外観です。旧スタジアムと形が非常に似ていることがお分かりいただけると思います。
こちらはフィールドです。
「美しい!!」とついつい唸ってしまうような球場ですね。
外壁にはライムストーンが使われ、荘厳なデザインが施されています。
この新・ヤンキースタジアムの特徴としては、旧ヤンキーススタジアムからの伝統を受け継ぎ、派手な造りなどは少なく野球を魅せるための球場としてデザインされているいうことです。そして、新スタジアムには56ものスイートルームがあります。これは旧スタジアムの3倍以上の数です。
全体収容の数では、新スタジアムは旧スタジアムよりも全体で数千席分減らされています。1席あたりのスペースを広げ、高級感を作り出そうという思惑です。
そしてスイートルームの席も増やし、企業や大型顧客のシーズンチケット等で収入を増やす、といったような球場経営の戦略が見て取れます。『顧客1人あたりの単価を上げる』というビジネスの観点に基づいています。そしてこれは『人気があるニューヨーク・ヤンキースだからこそ可能』な戦略と言えるでしょう。
球場の収容数等もビジネスの観点から見ると非常に面白いです。例えば、球場の収容数が大きすぎるといつまでもチケットが売れ残るのでチケット価格は比較的安くなります。収容数が少なければ、早く売り切れる可能性も出て、ファンは急いでチケットを購入します。そしてチケット数もそもそも少ないので価格を高く設定できます。
経済学の需要と供給の原理ですが、ちょうどいい需要と供給の見合う点で球場の収容数なども計算するということが重要です。ちなみにチケットの料金なども複雑なアルゴリズム(対戦チーム、席の位置、天候、残りチケット数などの組み合わせ)によって大きく変わります。飛行機のチケット代のようなイメージです。
【日本人選手】
皆さんご存知の通り、現在ヤンキースには田中将大投手が所属しています。昨年2014シーズンまではイチロー選手と黒田選手も所属していました。加藤豪大選手はアメリカ育ちで、現在ヤンキース傘下のマイナーチームに所属しています。
ADMのクライアントでもある五十嵐亮太投手(現ソフトバンクホークス所属)と、井川慶投手(現オリックスバファローズ所属)も過去にヤンキースでプレーしていました。
ヤンキースに所属中、もしくは過去に所属した日本人選手は以下の通りです。
五十嵐亮太 投手
井川慶 投手
イチロー 外野手
伊良部秀輝 投手
加藤豪大 内野手
黒田博樹 投手
田中将大 投手 (現在もヤンキースに所属)
松井秀喜 外野手
ヤンキースが最後にワールドチャンピオンになったのは2009年で、その時のワールドシリーズでMVPを獲得したのは松井秀喜選手です。
【GM、監督】
ヤンキースのGMは1998年からブライアン・キャッシュマンが務めています。
こちらがキャッシュマンです。
監督は2008年よりジョー・ジラルディが務めています。
こちらがジラルディ監督です。
【主力&注目選手】
ヤンキースの2015シーズン主力&注目選手を簡単に紹介させていただきます。
マサヒロ・タナカ
26歳 (2015年3月現在)
先発投手
皆さんご存知の田中将大投手です。もはや、ニューヨークやアメリカの野球ファンの中で田中選手を知らない方はいないでしょう。
昨年は20試合に登板、136.1イニングを投げて13勝5敗。防御率は2.77。三振の数は141。
2014シーズンは7月中旬からシーズンの終盤まで故障のため登板できませんでした。アメリカのサイトで面白いデータを見つけました。そのデータというのは、『2014シーズンの田中選手の成績を平均化して、怪我なく1シーズン過ごしたらどのような成績を残したか。』というものです。
その数値を見てみましょう。
34試合・232イニングに登板し、22勝9敗。
防御率は変わらないので2.77。三振は240。
ちなみに、昨年ア・リーグのサイヤング賞はコーリー・クルーバー投手(インディアンズ)が獲得しました。成績は34試合・235.2イニングに登板し、18勝9敗。防御率2.44。269の三振を奪いました。
一緒に、ナ・リーグのサイヤング賞を獲得したクレイトン・カーショー選手(ドジャーズ)の成績を見てみましょう。
27試合・198.1イニングに登板。21勝3敗。防御率1.77。239の三振を奪いました。
田中選手、今年は怪我なくシーズンを通して登板して、ぜひサイヤング賞獲得してほしいですね!!
田中選手の契約は2019年シーズンまでの7年間で結ばれており、総額は186億円。年棒は26億円以上になります。
2017年のシーズン後に、田中選手のオプトアウトが契約に含まれています。2017年のシーズン終了後に田中選手にはヤンキースとの契約を打ち切り、FA選手として他球団と交渉・契約する権利があるということです。
マイケル・ピネダ (Micheal Pineda)
26歳
先発投手
2014シーズンは13試合に登板、5勝5敗、防御率は1.89の成績でした。
2014シーズンの登板中に松脂を使用し、それが問題になったことで有名になってしまいました。写真の手のひらにも松脂が見えますね。
現在、オープン戦で田中選手と共に安定したピッチングを見せており、2015シーズンのヤンキース投手陣中軸としての活躍が期待されています。
アレックス・ロドリゲス (Alex Rodriguez)
39歳
ショート・三塁手(今シーズンはDHの可能性)
愛称はA-Rod。ご存知の方も多いと思いますが、2013年から2014年シーズンにかけて、禁止薬物の使用の処分として試合への出場が禁じられていました。いろいろな問題が重なり、彼の名声はかなり傷ついてしまいましたが、2015シーズンよりDHとして戻ってくる見込みです。
彼の契約は2017年まで、10年間の超大型契約です。総額303億円。2009・2010年の彼の年棒は約40億円。2015年の年棒は約26億円となる見込みです。この契約は2007年当時の、史上最高額の契約となり大きな話題となりました。
【戦力分析・チーム編成】
伝統あるチームで、ワールドシリーズやプレーオフの常連であったヤンキースですが、2013・2014年とプレーオフを逃しています。
〈2014オフシーズン〉
2014年オフに、先発ローテーションの柱である黒田選手をFAで失います。さらには『ザ・キャプテン』として知られるジーターの引退。イチロー選手もFAとなりマーリンズへ移籍。
ジータ―の抜けたショートのポジションを埋めるためにシェーン・グリーンを放出。タイガース、ダイヤモンドバックスを巻き込む三角トレードを行います。三角トレードの内容は以下の通りです。
ヤンキース獲得選手
ディディ・グレゴリウス 内野手(ダイヤモンドバックスから)
タイガース獲得選手
シェーン・グリーン投手(ヤンキースから)
ダイヤモンドバックス獲得選手
ロビー・レイ投手(ヤンキースから)
ドミンゴ・レイバ内野手(タイガースから)
そして、マイアミ・マーリンズともトレード行います。
ヤンキース獲得選手
ネイサン・エバルディ投手(マーリンズから)
ガレット・ジョーンズ一塁手(マーリンズから)
ドミンゴ・ゲルマン投手(マーリンズ傘下のマイナーチームから)
マーリンズ獲得選手
マーティン・プラド内野&外野手(ヤンキースから)
デイビッド・フェルプス投手 (ヤンキースから)
〈投手〉
《先発》
先発陣は田中選手、ピネダ、サバシアを軸にしたローテーションが組まれると予想されています。クリス・カプアーノは故障により復帰が5月頃になると予想されています。カプアーノの代役として、リリーフとして予想されていたウォーレンが先発ローテーションに入る見込みです。
田中将大 (Masahiro Tanaka)
マイケル・ピネダ (Michael Pineda)
CC・サバシア (CC. Sabathia)
ネイサン・イオバルディ (Nathan Eovaldi)
クリス・カプアーノ (Chris Capuano)
アダム・ウォーレン (Adam Warren) *リリーフ
《リリーフ》
2014オフにミラー、カーペンター、ウィルソンをトレード・FAで獲得し、ア・リーグ東地区でNo.1のリリーフ陣を形成しました。クローザーとしては、ベタンセスとミラーが起用されることになりそうです。
デリン・ベタンセス (Dellin Betances)
デイビッド・カーペンター (David Carpenter)
アンドリュー・ミラー (Andrew Miller)
アダム・ウォーレン (Adam Warren)
ジャスティンン・ウィルソン (Justin Wilson)
ブライアン・ミッチェル (Bryan Mitchell)
エスミル・ロジャーズ (Esmil Rogers)
〈野手〉
エルズベリーとガードナーは足が速く、ともに盗塁成功率の高い選手です。なのでこの2人は1・2番を組むことになるでしょう。昨年の成績を見る限り、あまり数字のよくなかった選手が多いようです。
《内野手》
1B マーク・テシェイラ (Mark Teixeira)
2B スティーブン・ドリュー (Stephen Drew)
3B チェイス・ヘッドリー (Chase Headley)
SS ディディ・グレゴリウス (Didi Gregorius)
《外野手》
RF カルロス・ベルトラン (Carlos Beltran)
CF ジャコビー・エルズベリー (Jacoby Ellsbury)
LF ブレット・ガードナー (Brett Gardner)
〈捕手〉
C ブライン・マッキャン (Bryan McCann)
以上がニューヨーク・ヤンキースの紹介となります。
第3チーム目はトロント・ブルージェイズを予定しています!